投資詐欺、特に仮想通貨や未公開株をめぐる詐欺の被害に遭ったとき、被害者が最初に取る行動が、その後の被害回復の成否を大きく左右します。パニック状態の中で何をすべきか判断するのは困難ですが、冷静な初動こそが、失われた資金を取り戻すための最初の、そして最も重要な一歩となります。
この記事では、投資詐欺被害に気づいた直後に被害者が「絶対にやってはいけないこと」と、迅速かつ正確に実行すべき「すべきことリスト」を、証拠保全と専門家への連携という観点から詳細に解説します。
パニックは禁物!詐欺被害直後に「絶対にやってはいけないこと」

被害に気づいた直後は動揺が大きく、「取り返さなければ」という焦りから、かえって事態を悪化させる行動を取りがちです。以下の5つの行動は、証拠を失ったり、さらに大きな被害を招いたりする可能性があるため、絶対に避けてください。
証拠となるデジタルデータを削除・改変すること
詐欺師とのやり取りの履歴(LINE、メール、SNSのDM、電話の録音データなど)を「思い出したくない」「恥ずかしい」という理由で削除することは、最も避けるべき行為です。
- なぜダメなのか: これらのデータは、詐欺の全容を証明し、詐欺師を特定するための唯一無二の証拠となります。一度削除してしまうと、専門の調査会社でも復元が極めて難しくなる場合があります。特に、チャットアプリのメッセージは、相手側が削除したり、時間が経つと自動的に消去されたりする設定になっていることもあるため、保全が最優先です。
詐欺師に対し「返金を求める交渉」や「追送金」をすること
被害が発覚した後、詐欺師に直接連絡を取り、感情的に返金を迫ることは危険です。また、「手数料を払えば全額戻る」「税金が必要だ」などと要求される「二次詐欺」の誘いに乗って、追加で送金することも絶対にやめてください。
- なぜダメなのか: 詐欺師は交渉に応じることはなく、さらに被害者を騙すための口実を探しています。追送金は明確な二次被害であり、資金の回収がさらに困難になります。交渉は、必ず専門家(弁護士や調査会社)を通じて行うべきです。
被害を受けた端末(PC・スマホ)を初期化・リセットすること
被害者が使用していたパソコンやスマートフォンには、詐欺師が残した目に見えないデジタルな痕跡が残されている可能性があります。
- なぜダメなのか: 端末を初期化したり、工場出荷時の設定に戻したりすると、詐欺師がアクセスしたログ、ダウンロードした不正なファイル、IPアドレスの痕跡など、デジタルフォレンジック(電子証拠の収集・解析技術)に必要なデータが完全に消えてしまいます。電源を切らず、そのままの状態を維持するのが理想です。
警察や弁護士に相談する前に「自力で資金追跡」を試みること
インターネット上には、仮想通貨の取引履歴を追跡できる公開ツール(エクスプローラー)がありますが、素人が安易に資金の流れを解析しようとすると、かえって混乱を招きます。
- なぜダメなのか: 追跡情報が不正確であると、専門家への相談時に誤った情報を伝えてしまい、調査の遅延や方向性の誤りに繋がる可能性があります。また、中途半端な知識で詐欺師に接触を試み、その痕跡を消されてしまうリスクもあります。資金追跡は専門の知識と技術を持つ調査会社に任せるべきです。
SNSで「被害を公開」したり「加害者を特定」しようと呼びかけること
被害のショックから、SNSなどで詐欺師のアカウント名や手口を公開したくなるかもしれませんが、これは控えるべきです。
- なぜダメなのか: 詐欺師に自分の行動が察知され、証拠となるアカウントやウェブサイトを即座に削除・閉鎖される可能性があります。また、誤った情報に基づいて個人を特定しようとすると、名誉毀損などの法的トラブルに巻き込まれるリスクもあります。
初動で差がつく!被害直後に実行すべき「すべきことリスト」

パニックを抑え、冷静に以下の手順を踏むことが、被害回復への第一歩となります。このリストは、「記録・保全」「金融機関への連絡」「専門家への相談準備」の3つのフェーズに分けて実行してください。
フェーズ1:証拠の記録・保全
最も重要かつ緊急性の高い作業です。すべての情報をデジタルデータとして保全し、記録を残します。
すべてのやり取りをスクリーンショットで記録する
詐欺師との全てのやり取りを、端末上で確認できる最高品質で記録します。
- 対象となるデータ: LINE、X(旧Twitter)、Instagram、FacebookなどのDM、Eメール、専用アプリ内のメッセージ、詐欺サイトのURLとページ全体、電話の通話記録(可能であれば録音)。
- 実行方法: スマートフォンやPCのスクリーンショット機能を使って、画面の隅々まで、日時や相手のアカウント情報が見える状態で記録します。長すぎるチャット履歴は、複数のスクリーンショットに分けて保全します。
送金・入金履歴のデータを確保する
資金移動に関するすべての記録を、銀行や仮想通貨取引所から取得します。
- 銀行送金の場合: 銀行口座の入出金明細を、送金日時、送金先口座名義、口座番号、金額が明確にわかる形で印刷するか、PDFとして保存します。
- 仮想通貨送金の場合: 利用した取引所の出金履歴(トランザクションID、送金先ウォレットアドレス、送金日時、金額)をすべてスクリーンショットで記録します。トランザクションID(TxID)は、ブロックチェーン追跡の生命線となるため、特に重要です。
時系列で被害状況をメモにまとめる
感情的にならず、客観的な事実のみを時系列で整理します。
- 記載すべき内容:
- 詐欺師と最初に接触した日時と媒体(例:2025年1月1日、Instagram)。
- 送金に関する全ての日時と詳細(送金方法、送金額、送金先情報)。
- 詐欺師の名前、使用していたSNSアカウント、電話番号、メールアドレスなど、すべての属性情報。
- どのような名目で勧誘され、どんな儲け話をされたか(勧誘内容)。
フェーズ2:金融機関・関係機関への緊急連絡
証拠を確保したら、資金が動くのを防ぐための行動を迅速に取ります。
銀行・証券会社に被害を報告し、口座凍結を依頼する
銀行口座へ送金してしまった場合は、すぐに送金先の口座がある銀行に連絡し、「振り込め詐欺救済法」に基づいて被害を報告します。
- 目的: 詐欺師の口座を凍結し、資金を引き出されるのを防ぐことです。ただし、仮想通貨取引所や海外口座への送金には適用されません。
仮想通貨取引所へ被害を報告する
仮想通貨を送金した場合、送金元として利用した国内の取引所に速やかに連絡し、被害状況を報告します。
- 目的: 取引所は、顧客保護の観点から、詐欺師が使用していることが判明したウォレットアドレスや、そのアドレスと関連付けられた自身の取引所の口座を特定し、凍結手続きを検討することがあります。
フェーズ3:専門家への相談準備
自力での解決は限界があります。確保した証拠をもって、専門家へ助けを求めます。
警察へ「相談」または「被害届」の準備をする
最寄りの警察署やサイバー犯罪対策窓口に相談します。警察は刑事事件として捜査を行う機関であり、民事的な返金交渉は行いませんが、被害届を受理してもらうことで捜査が開始される可能性があります。
- 持ち物: 上記で保全したすべての証拠(スクリーンショット、取引履歴のコピー、時系列メモ)。
投資詐欺に強い弁護士や専門の調査会社に相談する
民事的な返金請求や、資金追跡(仮想通貨トランザクションの解析)は、専門家でなければ対応できません。
- 弁護士: 法的な手続き(訴訟、交渉、請求)を行います。
- 調査会社: デジタルフォレンジックやブロックチェーン解析といった技術的な調査を行い、弁護士が法的な請求を行うための強力な証拠を収集します。
- 相談のポイント:
- 両方に相談し、それぞれの役割を確認すること。
- 投資詐欺や仮想通貨詐欺の対応実績が豊富な専門家を選ぶこと。
初動の速さが返金成功率を高める理由

なぜ初動がこれほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、詐欺グループの「資金洗浄のスピード」にあります。
- 資金洗浄(マネーロンダリング)のスピード: 詐欺師は被害者から得た資金を、銀行振込であれば複数の口座に細かく移し替え、仮想通貨であれば複雑な取引(ミキシングサービス利用、複数の海外取引所経由)を経て、わずか数時間のうちに追跡が極めて困難な状態にしてしまいます。
- 「時間」が「証拠」を失わせる: 時間が経過すればするほど、詐欺師が利用していたウェブサイトは閉鎖され、SNSアカウントは削除され、サーバーのアクセスログも消去されます。
- 調査会社の役割: 専門の調査会社は、被害直後のデータが新鮮なうちに、高度なツールを用いて資金の移動を追いかけ、資金が最終的に落ち着くウォレットや口座を特定します。この「時間との戦い」に勝つことが、弁護士による口座凍結や返金請求の成功率を飛躍的に高めるのです。
まとめ:冷静に証拠を保全し、専門家へ委ねる

投資詐欺被害に遭った場合、被害者が一人で全てを解決しようとするのは不可能です。重要なのは、パニックを抑え、迅速に証拠を保全し、その証拠をもって投資詐欺に強い専門家(弁護士・調査会社)に委ねることです。
初動の「すべきことリスト」を実行し、確保した証拠を専門家へ提示することで、あなたの被害回復の可能性は大きく高まります。
確保した証拠を基に、まずは無料で相談できる調査会社を探してみましょう。
